モデナ・バルサミコ酢の蔵

2年前から柿酢を作っている私にとって、「お酢」は謎が多かったのです。
2年前は多分失敗をし、1年前は大成功したのですが、「酢酸菌」についてますます謎が深まってました。

そんな時に知り合った「akane in balsamicland」のバルサミコ酢ソムリエakaneさん。
モデナで代々バルサミコ酢の蔵を所有してきた貴族の旧家に嫁ぎ、伝統的バルサミコ酢製法に拘って
尽力されている女性です。

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「ワイン蔵」のような通年通して温度の変わらない場所で作るものと想像していた私ですが、
「バルサミコ酢蔵」ってなんと!
屋根裏のような夏はしっかり暑く冬はしっかり寒くなる場所じゃないといけないんですって!

酢酸菌は14℃以上じゃないと働かず、高い気温ではさらに元気に動き回るので夏は大好き!
モデナの冬は霧が出て湿度がとても高いそうで、寒さの中でしっかり休息をとるのだとか。
3月、少しずつ動き出す時はまだ香りが少なく柔軟体操しているような時期。
そんな風に一年をしっかり過ごしたバルサミコ酢が「熟成を一年した」ことになるわけです。

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大きさが違う樽が5つセットでね、樽脇に穴が空いているのです。
菌が呼吸できて、1年間でお酢が11%蒸発していく穴。

一年に一度樽の手入れをする時に、
一番小さな樽の蒸発して少なくなった分を、少し大きな樽から補う。
すると、二番目に小さな樽が蒸発した分+隣に補った分少なくなるから、隣の大きな樽から補う・・・。
最後の一番大きな5番目の樽は、5つ分の蒸発した量が減るので、マザーの樽に貯めてある「葡萄を煮詰めた液」を補うそうな。



「バルサミコの複雑な香りと味わいを作るのは樽なの」
そこの樽の穴を開けて匂い嗅いでみて。
そう言われて、鼻を近づけると、ふんふん。穏やかな気のよい香り♪
「それはオーク材で作った樽」

隣の樽を嗅いでみると、ん?香りが凄く強いね(面白い!)
「それは栗の木で作った樽よ」

ここら辺の樽を嗅いでみてと言われて、クンクン、アメリカンチェリーの匂いがする!(山形さくらんぼじゃないの)
「そう、それは桜の木の樽!」
私、桜の木がこんなにチェリーの香りがするって初めて知りました(驚)

他に、桑の木の樽、アカシアの木の樽。
明日行くことになる博物館にあった「ジュニパーベリーの木の樽」はスパイシーで衝撃的な香りなの!

5つの樽は必ずに種類以上の材質で作られているルールで、
7年寝かせることで木の香や風味を吸収したお酢を、8年後から一年に一度樽を移し替えていく
違う種類の木の香りや風味を吸収し、翌年にまた違う種類を・・・そうやって違う風味になったバルサミコ酢がゆっくり混ざっていく。

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そのような説明が書かれた図が、これ。
12年経ってから、ようやく「バルサミコ酢」と認められるそうな。
でも、1年に一度の手入れをし続ける限り永遠に熟成し続けるバルサミコ酢なので全部とって終わりにせず、小さな樽の8%だけ瓶に詰める。
採取した分を隣の樽から補う。

こうして25年経ったものが「最高クオリティーのバルサミコ」を認められるとか。
そのときには、25年前100kgの葡萄で仕込むバルサミコは、25年で2~3Lのバルサミコ酢になるのですって!!

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蔵の片隅に連れて行かれると、少し漏れている古い古い樽が置いてありました。
樽の左右に取っ手のような突起が2つあるでしょう?それが古い樽の証拠ですって。
(ほら、右端の樽は取っ手がないでしょう?)

これがなんと!!akane家の家宝「1800年代に作られたバルサミコ酢」樽!!
ゆうに250年は経ってるのだとか。
この樽を前に、彼女の嫁ぎ先の歴史を伺ってまたびっくり。

バルサミコ酢を確立した王様エステンセ。
当時エミリア・ロマーニャの中の、フェラーラ、モデナ、レッジョ・エミリアを治めていたけれど、
150数年前イタリア統一の時に負けて、オーストラリアに亡命したのですって。
その時腹心の部下であるこの家のお祖父様を伴って亡命したのだそうな。
その時にバルサミコ酢蔵は一度放置され、第一次大戦以降戻ってきた時、屋敷の片隅に残っていたのがこの樽だとかで。

いやあ・・・絶句でしょうw
香りを嗅がせていただきました。
またも絶句。
松尾芭蕉が、松島の美しさの前に「松島や、ああ松島や松島や」としか読めなかったという気持ちがわかる。言葉がでない。


ところで、家庭でお酢を作ってる人は何人いるか知りませんが、
柿酢を作ると「ナタデココ」みたいな軟骨系半透明なものが1cm以上の厚みで出来てくるのです。
ナタデココと同じ菌だそうで、文字って「ナタデカキ」と呼ばれてたりしますがw
これが出来ると美味しい柿酢だと言われるわりに、これを放置しておくとお酢が水みたいになるんです!!!
「なんで?」

これをakaneさんに聞くために、私はモデナまで来たのかもしれない(苦笑)
どの本を読んでも、賛否両論のままだれもしっかりわからないのだもの。
akaneさんは明快に答えてくれました。
「上に浮かぶ産膜酵母の塊は取り除かないと、酢酸菌が窒息して死んでしまうから、最終的に酢じゃなくなるのよ」
ああ!そうかそうか!!!
今年の秋に作る柿酢は白いやつを捨てよう(メモメモ)


さて。
古いお屋敷に戻って、今度はバルサミコ酢のテイスティングをば。

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わあ、なにやら理科の実験のようでわくわく♪

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「av」、これはワインビネガーだそうです。
「saba」は、ぶどうジュースを煮詰めたシロップ。

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これをまず、瓶を揺すってから蝋燭の火にかざしました。
左のsaba、シロップは濃度が高いからドロっとしてます。
右は、そのsabaとワインビネガーを合わせたもの。トロ~リときれいな色です。
味見させてくれました。
あ、馴染みのある『美味しいバルサミコ酢』の味!!

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振って光にかざすと、これはサラッとしているから瓶表面に膜を張ることはしない。
これが「本物のバルサミコ酢」
そう聞いて、「は?」っと聞き返したくなったのは私だけではないと思う。

美味しいバルサミコ酢は、甘みがあってとろみがある。
熟成してドロっとしてるのが美味しい高級なものだから、高くても納得・・・ってお金を払う。

それが常識になってるのは、「作られたイメージ」なのですって!!!
「高級そう」「美味しそう」なイメージに合わせて、どんどんドロっとさせただけで、
全ては「葡萄シロップ」と「ワインビネガー」を混ぜ合わせて樽でチャット寝かせて作った「ニセモノ」。

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そしてこれ、250年ほど経ったバルサミコ酢のとろみも、このくらい。
そういって、ティースプーンに一杯注いでくれました。
すごい芳香。
そして味たるや、このまま舐めるのが一番よね?と言いたくなる複雑な深い味わい。
これだけの年月と手間で作られた味をお料理に使うってもったいなく思いました。

少量を手の甲につけて広げると、半日ほど香りを楽しめると聞いてやってみます。
ほんと、香水を楽しむように喜びの香り♪
やっぱり、お酒のようにゆっくりなめて楽しむのでいいんじゃないだろうか・・・。うーむ。
でも、人間の手間ヒマでこんな素晴らしいものが作り出せることに感動ばかり。


akaneさんがここに至るまでとバルサミコ酢の製法などを彼女自身が詳しく語る記事があります。
どうぞ読んでみてくださいな。



モデナ滞在記、次はお料理編です♪つづく。

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Commented by erikaboy1425 at 2018-07-11 10:33
どこまでも探究心にあふれるafricaさんの行動力は素晴らしいですね!

africaさんのは、旅行じゃなくて、研修でしたか!!

25年物のバルサミコいただいたことがあります。
あの酸味が抜け切った豊穣な甘みは忘れられません。アイスクリームにかけたりして堪能しましたが、今後は縁がないと思われますので、あの時たくさん味わうことが出来て幸せでした。数十年とか二百年とか〜想像外ではありますが、25年物とはどれくらい違うのか、気になります。
Commented by africaj at 2018-07-15 23:03
> erikaboy1425さん

!!!えりかさん、なるほど!旅行じゃなくて研修・・・まさしくです(爆)
25年ものを味わわれましたか。
人間の舌はどこまで味わいを感じることが出来るのでしょうね。
でも一番わかり易いのは香りみたいです。
一滴手にすり込むと2百年ものは30分はずーっと良い香りを楽しむことが出来るんです。

by africaj | 2018-07-06 17:31 | おでかけスペイン+イタリア・2018 | Comments(2)